小説 「妄想の仮面」 第十三章・・・
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『妄想の仮面』 紅殻格子
十三.夫の独白(六)
後ろ髪を引かれる思いで、私は由美子と清川を残して浴室へ向かった。
(由美子はどうするだろうか?)
むろん清川とは打ち合わせ済みだった。愛美が眠って私が浴室へ行くと同時に、清川が動き出す手はずだった。
私は浴室に入った。しかし扉は少し隙間を開けておく。扉の開閉には大きな音がするので、後で自由に出入りできるようにするためだ。
急ぎシャワーを浴びると、私は浴室からリビングの話し声に耳を傾けた。 テレビの音に混ざって、由美子と清川の密やかな会話が聞こえてくる。
何故由美子は、清川にキスされたことを黙っているのだろうか? 酒に酔った清川を庇うつもりだったのか、それとも・・いずれにしても今晩結論が出るはずだった。 リビングからは、テレビの音だけしか聞こえてこなくなった。
心がざわめき立った。
(由美子、どうして助けを求めに来ない?)
清川には乳房の愛撫まで認めている。由美子が騒がないとすれば、清川に不貞行為を許していることに他ならない。
頭が真っ白になった。むろん私が仕組んだことだ。
由美子を女に戻したかったからだ。だが心のどこかで、私は由美子が女へ戻ることを拒んでいたのかもしれない。
(ところが由美子は・・)
やはり甲斐甲斐しい良妻賢母なと、偽善者達がつくった幻なのだろうか。社会の鋳型にはめ込まれた偽りの聖女像なのだろうか。
嫉妬――その行き場のない感情だけが、私のたぎった血液を逆流させる。私は腰にバスタオルを巻くと、静かに浴室を出てリビングへ忍び足で向かった。
つづく・・・
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