『人外境の花嫁』六.伏魔殿の監禁者(十)
『人外境の花嫁』
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六.伏魔殿の監禁者 (十)
麻美の疑問は消えない。
「確かに日本にも馬頭観音とかあるから、インドの神様なら象でもおかしくないけど、何で抱き合っていなければいけないの?」
「それは歓喜天が、その名の通り性を司る仏だからです。特に双身歓喜天は、男神と女神が抱き合った像で表現されます。これは男女和合を意味し、日本では秘仏とされて人目に触れてきませんでした」
「せ、性の仏様・・」
昔、降矢木から立川流と言う宗教について聞いたことがある。男女交合の絶頂感を即身成仏の境地とする邪教だったらしい。
立川流は江戸時代に弾圧されたが、天神会もその類の教義を受け継ぐ宗教団体なのだろうか。
麻美は眉を顰めて自分の儀礼服を見た。
先ほど挨拶された上級階位者は、様々な色の儀礼服を着ていたが、やはり男も女も下は素っ裸だとすぐにわかった。
支部長はにんまりと笑った。
「麻美様が今ご想像されている通りですよ。我々幹部は、性の儀式によって結ばれています。その理由は後ほどご説明するとして、まずは上級階位への入会式をご覧下さい」
意味ありげに語った支部長は、ミーアに向かって合図すると、自らは歓喜天像の前に進み出て平伏した。
ふと麻美は甘い匂いを感じた。
見るとミーアが、広間の隅々に置かれた香炉に火を入れている。
やがて広間全体に、微かな煙と甘い香りが広がっていく。
そのどこかトロリとした匂いに、麻美は頭の芯がぼんやりとするのを感じた。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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麻美の疑問は消えない。
「確かに日本にも馬頭観音とかあるから、インドの神様なら象でもおかしくないけど、何で抱き合っていなければいけないの?」
「それは歓喜天が、その名の通り性を司る仏だからです。特に双身歓喜天は、男神と女神が抱き合った像で表現されます。これは男女和合を意味し、日本では秘仏とされて人目に触れてきませんでした」
「せ、性の仏様・・」
昔、降矢木から立川流と言う宗教について聞いたことがある。男女交合の絶頂感を即身成仏の境地とする邪教だったらしい。
立川流は江戸時代に弾圧されたが、天神会もその類の教義を受け継ぐ宗教団体なのだろうか。
麻美は眉を顰めて自分の儀礼服を見た。
先ほど挨拶された上級階位者は、様々な色の儀礼服を着ていたが、やはり男も女も下は素っ裸だとすぐにわかった。
支部長はにんまりと笑った。
「麻美様が今ご想像されている通りですよ。我々幹部は、性の儀式によって結ばれています。その理由は後ほどご説明するとして、まずは上級階位への入会式をご覧下さい」
意味ありげに語った支部長は、ミーアに向かって合図すると、自らは歓喜天像の前に進み出て平伏した。
ふと麻美は甘い匂いを感じた。
見るとミーアが、広間の隅々に置かれた香炉に火を入れている。
やがて広間全体に、微かな煙と甘い香りが広がっていく。
そのどこかトロリとした匂いに、麻美は頭の芯がぼんやりとするのを感じた。
つづく…
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