『姦 計』 第十章
『姦 計』
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(十)
港湾都市横浜も一歩内陸に入ると、多摩丘陵の面影を残す風景が広がっている。
こんもりとした雑木林の丘は、鶴見川岸に拓けた田畑に入り組み、近郊の近代的は家々をも融和して、見事な田園都市をつくりあげている。
夕暮れ、夏の終わりに嘆くヒグラシの声を浴びながら、片倉は松村の待つマンションへと車で向かっていた。
密約から半月、片倉は松村に突然呼び出しを受けた。
松村は一晩で友紀を落としたと豪語した。
病院で友紀に声をかけると、何の躊躇いもなく食事につきあってくれたという。
そして、その晩、友紀の方からホテルへ行きたいと誘われたらしい。
片倉としては、友紀の淫らな写真を送ってもらえればそれで事は済む。
しかし松村はよほど上手く友紀を手懐けたのか、それとも報酬の増額を要求したいのか、写真を撮る前に成果を見せたいと言い張った。
写真を手にするまでは臍を曲げられては困るので、片倉はやむなく松村に従った。
片倉は松村の部屋のチャイムを押した。
「ああ、片倉さん、お待ちしていました」
招き入れようとする松村を、片倉は玄関の外へ引っ張りだした。
「松ちゃん、僕は面が割れているんだ。彼女に会ったらばれてしまうよ」
「大丈夫ですよ。彼女は目隠しをしていますから、誰が来たかわからないはずです」
松村は片倉の心配をよそに、一人暮らしのマンションに案内した。
部屋は独身男には勿体無い立派な3LDKだった。
交代で女たちに掃除させているのか、廊下に塵ひとつ落ちていない。
松村は人差し指を口に当て、片倉に声を出さないよう注意し、リビングの扉を開けた。
(あっ!)
片倉は松村が声を出さないよう身振りで伝えた意味がわかった。
十畳を越えるリビングの中央には、藤でできた一人がけのリクライニングチェアが置かれていた。
その椅子にはアイマスクをした全裸の女が座っている。
否、座っているのではない。
よく見るとバストとウエストには縄がかけられ、椅子の背凭れに縛りつけられている。
そして両脚は椅子の肘掛にM字型で固定され、性器が剥き出しになっている。
その光景は床の間に置かれた一輪挿しにも似ていた。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る
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港湾都市横浜も一歩内陸に入ると、多摩丘陵の面影を残す風景が広がっている。
こんもりとした雑木林の丘は、鶴見川岸に拓けた田畑に入り組み、近郊の近代的は家々をも融和して、見事な田園都市をつくりあげている。
夕暮れ、夏の終わりに嘆くヒグラシの声を浴びながら、片倉は松村の待つマンションへと車で向かっていた。
密約から半月、片倉は松村に突然呼び出しを受けた。
松村は一晩で友紀を落としたと豪語した。
病院で友紀に声をかけると、何の躊躇いもなく食事につきあってくれたという。
そして、その晩、友紀の方からホテルへ行きたいと誘われたらしい。
片倉としては、友紀の淫らな写真を送ってもらえればそれで事は済む。
しかし松村はよほど上手く友紀を手懐けたのか、それとも報酬の増額を要求したいのか、写真を撮る前に成果を見せたいと言い張った。
写真を手にするまでは臍を曲げられては困るので、片倉はやむなく松村に従った。
片倉は松村の部屋のチャイムを押した。
「ああ、片倉さん、お待ちしていました」
招き入れようとする松村を、片倉は玄関の外へ引っ張りだした。
「松ちゃん、僕は面が割れているんだ。彼女に会ったらばれてしまうよ」
「大丈夫ですよ。彼女は目隠しをしていますから、誰が来たかわからないはずです」
松村は片倉の心配をよそに、一人暮らしのマンションに案内した。
部屋は独身男には勿体無い立派な3LDKだった。
交代で女たちに掃除させているのか、廊下に塵ひとつ落ちていない。
松村は人差し指を口に当て、片倉に声を出さないよう注意し、リビングの扉を開けた。
(あっ!)
片倉は松村が声を出さないよう身振りで伝えた意味がわかった。
十畳を越えるリビングの中央には、藤でできた一人がけのリクライニングチェアが置かれていた。
その椅子にはアイマスクをした全裸の女が座っている。
否、座っているのではない。
よく見るとバストとウエストには縄がかけられ、椅子の背凭れに縛りつけられている。
そして両脚は椅子の肘掛にM字型で固定され、性器が剥き出しになっている。
その光景は床の間に置かれた一輪挿しにも似ていた。
つづく…
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