心の闇⑥ 泪橋(その4)…降矢木士朗
心の闇⑥ 泪橋(その4)…降矢木士朗
FC2 R18官能小説
道路までテーブルと椅子が食み出した安酒屋がありました。
十人ばかりの労働者が昼間から酒を呑んで騒いでいます。
その中に紅一点、四十過ぎらしき女性が一人混じって呑んでいました。
化粧はしていませんが酒焼けした声で、水商売上りのような男好きする頽廃的な雰囲気を持っています。
しかしどこかうらぶれて薄汚れた容貌から、彼女がこの街の住人であることは間違いなさそうです。
信号を待つふりをして彼女を見ていた月絵が呟きました。
「先生、彼女は幸せなんですよね?」
「ああ、皆で酒を呑んで笑っているじゃないか」
おそらくこの街まで落ちてきたのでしょう。
そして見栄やプライドを捨てて、生涯この街で暮らしていく決心をしたのかもしれません。
否、金や地位のある男達を相手にしてきた彼女は、ただ一生懸命生きているだけの男達の中で、安らぎに満ちた終の棲家を見つけたのかもしれません。
心から笑えること・・それを単純に幸せと定義してもいいならば、今の彼女は輝くほど幸せだと言えるのではないでしょうか。
しばらくドヤ街を月絵と歩いていると、巨大なアーケイドが見えてきました。
『いろは会商店街』です。
構えは立派ですが、八割近い店がシャッターを閉めています。
客の姿はほとんどなく、山谷の労働者がぶらぶらと歩いているだけです。
「あ、『明日のジョー』ですよ」
月絵が言う通り、商店街には『明日のジョー』のポスターなどが至る所に貼られています。
「いくら矢吹ジョーでも、この商店街は活性化できないだろうなあ」
『明日のジョー』の人気にあやかろうとしても、決して観光客が好んで訪れる環境ではありません。
またここの住人は、ジョーと同じく、食い潰して山谷へ流れて来た者ばかりなのです。
何とも皮肉のような話です。
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しかしどこかうらぶれて薄汚れた容貌から、彼女がこの街の住人であることは間違いなさそうです。
信号を待つふりをして彼女を見ていた月絵が呟きました。
「先生、彼女は幸せなんですよね?」
「ああ、皆で酒を呑んで笑っているじゃないか」
おそらくこの街まで落ちてきたのでしょう。
そして見栄やプライドを捨てて、生涯この街で暮らしていく決心をしたのかもしれません。
否、金や地位のある男達を相手にしてきた彼女は、ただ一生懸命生きているだけの男達の中で、安らぎに満ちた終の棲家を見つけたのかもしれません。
心から笑えること・・それを単純に幸せと定義してもいいならば、今の彼女は輝くほど幸せだと言えるのではないでしょうか。
しばらくドヤ街を月絵と歩いていると、巨大なアーケイドが見えてきました。
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構えは立派ですが、八割近い店がシャッターを閉めています。
客の姿はほとんどなく、山谷の労働者がぶらぶらと歩いているだけです。
「あ、『明日のジョー』ですよ」
月絵が言う通り、商店街には『明日のジョー』のポスターなどが至る所に貼られています。
「いくら矢吹ジョーでも、この商店街は活性化できないだろうなあ」
『明日のジョー』の人気にあやかろうとしても、決して観光客が好んで訪れる環境ではありません。
またここの住人は、ジョーと同じく、食い潰して山谷へ流れて来た者ばかりなのです。
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